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morinobi
林業とデザインを軸に、森づくり、ものづくり、人づくり、場づくり、エネルギーの5つの事業を展開しています。杉玉DIY KIT「NICOMORI」は、 森に道をつくる時に出てくる素材を利用し、先人たちが残してくれた森からの恵みを生かしたいという思いが込められています。「森のび」は、森を次世代につなぐため、森に関わる人たちを育み、森の持つ価値を多くの人に伝えていきます。
Bornfild
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Interview
杉玉DIY KITを通して、森と暮らしをつなげられたら
合同会社森のび 代表社員 安井洋文 ・ 河野祐子
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森に道をつくる時に出てくる素材を無駄にすることなく、丁寧に活用する
ーー合同会社森のびについて教えてください。
安井:会社のミッションは「森を育み、水を守り、未来をつくる」。そしてヴィジョンとして「森と人をつなぐ」ことを掲げ、林業とデザインを軸に、森づくり、ものづくり、人づくり、場づくり、エネルギーという5つの事業を展開しています。日本の林業は急峻な山から木を下ろさなければなりませんが、重くて大きい木を山から出すということはすごく大変な仕事です。でも、山には道がありません。そこで、道をつくり木材を搬出できる森づくりをしながら、その道を森と人をつなぐ道、安全に子供たちと森に入ることにも活用しています。そして山の手入れをしながら、出てきた素材でものづくりをしています。
ーーどのようなものを作っていますか?
安井:道をつくる時に出てきた杉の葉を使い、杉玉 DIY KITを作っています。杉玉は、中心の芯に杉の葉を放射状に刺し、球状にしたものです。元々は奈良県のお酒の神様を祭る大神神社(おおみわじんじゃ)が発祥で、新酒ができた時に酒屋の軒先に飾られるものとして古くから親しまれてきたもの。普通は直径30cm、大きいものだと直径1mほどのものまであります。わたしたちは12cmほどの手に乗るサイズの杉玉のDIY KITにすることでもっと身近に暮らしの中に取り入れてもらえるようにしました。昔は杉の葉を焚きつけに使ったり杉玉にしたり、木材だけではなく山の全ての資源を無駄なく使っていました。それが今は木材は資源として使われるけれど、葉は使われずそのまま山に還っていくという状態です。昔の人たちが残してくれた森をもう少し丁寧に、そして無駄なく生かしたいという思いから、杉玉に注目しました。
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ーー杉玉をもっと身近に、という考えは新しいですね。
安井:これまでもあったとは思いますが、手間暇がかかるので単価がそれなりに高いんです。でも、自分で作るキットであればその部分がクリアできますし、何より自分で作ると愛着が湧いてきますよね。今、身の回りにある木材も海の向こうから来た物が多いですし、蛇口をひねると自動的に水が出てきたりと、自然や森と暮らしがつながっていることを意識しなくても暮らしていける社会です。でも、そういうつながりを意識しながら生きていくことが大切だとわたしたちは思うので、杉玉を通じて森や、森と暮らしのつながりを身近に感じてほしいと思っています。
河野:実際に杉玉DIY KITを小学生の子供を持つ親子や若い世代、地域の老人会の方々とも一緒に作りました。世代関係なく和気あいあいと作ったり、もしくは一人で静かに作ったり、いろいろな楽しみ方ができるんだなと実感しました。できあがったものを高い値段で買うよりも、自分で作るという体験そのものを提供できたら楽しくなると思っています。
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森や林業に誠実に関わる人たちが、安心して生きられる世の中を目指して
ーーお2人が森づくりに携わるようになったきっかけを教えてください。
安井:下北山村に来るまでも15年ほど林業をしていましたが、矛盾を感じていました。というのも、斜陽産業だからこそ産業として成り立つように効率化していく、という国の方針があるのですが、雨も多く急峻な日本の山に大型の機械を入れて林業をすると山に負担をかけていることに気づきました。村では、自然の摂理に沿った小さな林業と、そういった林業を支援する仕組みづくりに携われたらという思いから、地域おこし協力隊として移住してきました。
河野:ずっとデザインの仕事をしていて、田舎暮らしをしたいと思っていた時に友人が先に移住、季節ごとに訪問し自然の美しい風景に驚きました。自伐型林業の研修に通い参加した後、安井より1年先に地域おこし協力隊として移住してきました。実際にユンボに乗ったり山に入るようになると、林業は危険でさまざまな課題があることを知りました。同時に、外からきた人間だからこそ気づける改善点や、制度に対して「それって、おかしいよね?」の疑問も率直に口にしてきました。当たり前のこととして受け入れてきたことを少しずつ変えることで、より良くなっていけばと思いながら取り組んでいます。
ーー2人が一緒にやっているからこそできることや可能性はどんなところにあると思いますか。
河野:林業の現場から出てくるさまざまな森の恵みに目を向け、価値あるものとして変えることができたり、現場から直接アウトプットができるというのが面白いところだと思います。私も山の中に入ることもありますし、安井もすごく細かいところまでデザインをチェックします。最初から最後までやりきるということが、2人でならできることは強みなのかもしれないですね。
ーー最後に、お2人がこれから取り組んでいきたいこと、やっていきたいことを教えてください。
安井:林業はすごく危険で、全産業の平均に比べると怪我をしたり命を落とす可能性が10倍も高い仕事です。価値ある仕事をしているのに、すごく収入も低いのが現状です。森や林業に誠実に関わる人たちが、普通に安心して生きていける、そんな世の中になるように取り組んでいきたいと思っています。
河野:一つ一つが小さくても、コツコツと丁寧にやることを大切にしています。仲間が増えたとしても、それは続けていきたい。また、自分たちが「面白いよね」と思うことを、これからも躊躇なくやっていきたいです。
Products
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