APPLE JACK

樹齢数百年、年輪が詰まった吉野杉とその木材を極限まで薄く削る職人技。アップルジャックは、木の温もりをお届けします。 川上村の自然とともに生まれたこだわりの木器は、食卓を彩り、人と人を繋ぐ作品です。日々の暮らしの「あたりまえ」を豊かにする一品を、ぜひお手元で感じてください。

Bornfild

Interview

軽くてシンプル。お客様のことを一番に考える父と家族が届ける、心のこもった木の器。


アップルジャック 小林 美緒

ギリギリまで削れるのは吉野杉だからこそ
「使うほど“木の顔”が変わる楽しさも味わって」

ーーアップルジャックは家族でやっている工房なんですね。

小林:工房をやっていた父と元パティシエの弟、そして元警察官の私をメインに、柿の葉寿司の製造販売をしている母と、最近地元に帰ってきた調理師の弟も含めた家族ぐるみの会社です。それぞれ別の夢を持っていたのに、今やみんなで木工に携わっているなんて不思議です。

ーーアップルジャックで作っているものと特徴を教えてください。

小林:木器、主に食にまつわる食器類全般を作っています。私の食卓に並んでいるお茶碗やお皿、コップはすべて木でできていますし、職場でコーヒーも飲むのも木のカップです。一般的には陶器が使われているものを、すべて木で揃えています。

特徴はシンプルかつ軽量で、無駄なデザインがないところです。父は若い頃航空自衛隊に勤めていたのですが、航空機はいかに無駄なものをつけず軽くするかを大事にしているそうで、ものづくりにおいてもその考え方が引き継がれています。

また、普段から手にとって毎日使ってほしいからこそ、使いやすくてシンプルで、お年を召しても軽くて使いやすいものを、という想いもあります。ここまで軽量にできるのは、ギリギリまで削っても耐えうる強さがある吉野杉を使っているからこそですね。

普通の食器よりも値段は高めだと思いますが、大事にしまっておくのではなく、日常でぜひ使ってほしいと思っています。普通に洗って乾かしてもらえたらいつまでも使えますし、使っているうちに味が出て、木の顔が変わってくるのもまたいいですよ。

父と弟には死ぬまでものづくりを楽しんでほしいから
ものづくり以外の場所を支えていく

ーー小林さんは、一度川上村を出た後、戻ってきて工房に入ったそうですね。

小林:18歳から2024年の3月末まで、奈良県内で警察官として働いていました。異動も多いので村を出て一人暮らしをしていましたが、私の原点は大好きな川上村にずっとあると思っていました。警察官としていろんなことに遭遇し、嫌なものを見ても、ここに帰ってきたらリセットされてまた頑張る、そんな15年を送っていたんだなということに、退職してから気づきました。

川上村には、見えないものが守ってくれているような神秘さがあります。ランニングに行って帰ってくるまで誰にも出会わないほどに人は少なくなっていますが、昔から変わらずある“何か”は存在していて、寂しいようで暖かさがずっと残っている場所ですね。

ーー弟さんも1回村を離れて戻ってこられたんですね。

小林:弟は元々お菓子作りが大好きだったので、パティシエとして就職しました。でもしばらく経ってから「帰ってもいいですか」と両親に相談があり、それから父の仕事を見たり、いろいろなところに修行に行ったり、自分探しの旅に出たりしていました。

最終的にうちに戻ってきて、最初はランバージャックという屋号で父とはまた違うもの、本当にシンプルというか「これはなんだろう?」という唯一無二の置物や花器を作っていました。でも、私が戻ってきた時に家族会議を開き、「みんなで同じ方向を向いて工房をやっていきたい」という思いを伝えたところ、弟も父と同じものを作る方向に意識を向けてくれるようになりました。

ーー小林さんはどんな立場としてアップルジャックを支えていますか。

小林:私は、父と弟に、とにかくものづくりを死ぬまで楽しんでほしいと心から思っています。もし、うちに入ってくれる職人さんがいるのであれば、その人も含め、みんながものづくりを楽しめる環境を私は提供していくことに力を注いでいます。

父と弟はものづくりに特化しているので、新しいイベントへの参加の声掛けがあってもなかなか動きません。でも私は、チャンスがあるならやってみたいという思いがあります。0から1を作るのが父と弟であり、その先の1を2,3に変えていくところは私の仕事だと思っています。

尊敬する父の作品を飾るギャラリーと
家族の特技を発揮できるカフェを作りたい

ーー実際に使ってくださっている人たちの声を聞くことはありますか。

小林:はい、よくあります。取材を受けてテレビに出た後などは、父の携帯に電話がかかってきて注文が入ったりします。ある時、県外の方から「両親が歳をとって握力が弱くなり、陶器のご飯茶碗を持って食べれなくなった。木のお茶碗をプレゼントしたいけれど、どこにも売ってない」と電話がありました。

父は愛情深いところがあるので、その方のために時間を費やして特別に作ったこともありました。そしてここも父のすごいところなんですが、父は出来上がったものを送る時に必ず達筆な字で一筆を添えて送ります。この時もいつものようにそうしたら「両親が自分でお茶碗を持って食べています」という嬉しい返信が届いたんです。

こんな風に、お客様からの喜びの手紙が届いている様子を警察官の時から見ていて、本当に父を尊敬していました。それに、父はどんなに仕事が詰まっている時も、お客様から頼まれたら決して断りません。そんな父の人柄に惹かれて集まってくださっている方も多くいるので、私が工房を継ぐとしても、父の姿勢は絶対に引き継いでいきたいと思っています。

ーーこれからの夢を教えてください。

小林:警察官を辞めた時に一番最初に掲げた夢が、父のギャラリーを作るということです。こんな田舎にも癒しを求めに、そして商品を見に来てくださる方もいらっしゃるので、その方たちがちょっと腰を下ろして休めるカフェスペースを提供したいと思っています。

元パティシエの弟も、カフェで自分たちが作った器に自分が作ったお菓子を載せて出したい、という夢を語ってくれました。母が作る柿の葉寿司も食べてもらえたらいいですね。そしてもう一人の弟が調理師なので、例えば月に1回予約制にして日本料理のコースを出すとか、家族それぞれの特技を発揮できる一つの場所にしていきたいと思っています。

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