@OKUYAMATO NARA
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スガノ工房

奈良・奥大和の自然に囲まれたスガノ工房は、下請けから自社ブランドへと歩みを進めた縫製工房です。
100%オーガニックコットンと綿糸のみを使用し、締め付けのない心地よい肌着を一枚ずつ丁寧に仕立てています。
自然と共生する素材選び、唯一無二の縫製技術、快適さを追求したデザイン。そのすべてに「本物のものづくり」への信念が息づいています。
技術と素材を次世代へつなぐために、静かな里山から誠実な製品を世界へ発信しています。

Interview

自然と調和する、本物のものづくり

スガノ工房株式会社 代表 青海徳生

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下請けから、本物のものづくりへ

ーーまず、スガノ工房さんがどのような活動をされているか、ご紹介いただけますか?

青海:スガノ工房の始まりは、1970年ごろに祖父が「地域でできる仕事を」と考えて、内職の仕事を持ち込んだことでした。私が子どもの頃には、縫製を担う方々が集まり、かなりの規模で稼働していました。当時は肌着ではなく、家庭用品を多くつくっていて、近隣には30件ほどの縫製工場が集まっていました。
しかし1990年代に入ると、縫製の仕事が中国に流出し、工場も大きな転換を迫られました。その後2000年ごろ、母が「本物をつくりたい」との強い思いからオーガニックコットンに出会い、再スタートを切りました。

100%オーガニックの決断

ーーオーガニック100%の肌着づくりを始めたきっかけを教えてください。

青海:当時、私はサラリーマンをしていましたが、母には下請け時代からずっと「化学繊維への違和感」がありました。「なぜこれでいいのか」という問いが消えず、100%オーガニックに挑戦する決意につながったのです。
振り返れば、化学繊維を扱っていた頃は縫製職人の手が荒れ、常にクリームが必要でした。けれどオーガニックコットンに変えてからは手荒れが消え、自然な状態に戻っていったのです。化学繊維が油分や水分を奪う性質を持つことを、実体験で知ることになりました。天然繊維の風合いや心地よさに魅了されたことも、オーガニックにこだわる理由のひとつです。

オーガニックが変えた暮らしと意識

ーー「オーガニック」に出会ったことで、暮らしやものづくりの姿勢にどのような変化がありましたか?

青海:私はもともと整備士の仕事をしており、オーガニックとは無縁の生活を送っていました。ものを選ぶときも安さを重視し、深く考えることはありませんでした。ところが母の仕事を手伝い始め、オーガニックについて徹底的に学ぶうちに、農家が搾取される現状や化学繊維が及ぼす影響を知ることになったのです。
その経験を通じて、私自身の生活も変わりました。薬を安易に服用することをやめ、素材と人間の関わりを意識するようになりました。暮らしの根本を見直すきっかけを与えてくれたのが、オーガニックとの出会いでした。
現在、スガノ工房ではオーガニック100%の肌着を中心に、スリープウェアなども展開しています。特にお尻まわりの皮膚は吸収率が非常に高く、体調に影響を与える部位だといわれています。実際に「身体の調子が安定してきた」「肌の炎症が落ち着いた」といった声が寄せられ、素材が人の身体に与える力を改めて実感しています。

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農薬に頼らない、自然と共生するコットン

ーーオーガニックコットンを選ぶ理由、素材の魅力や不思議さについてお聞かせください。

青海:私たちが扱うコットンを育てるサリーさんは、もともと昆虫学者でした。農薬を使わなくてもコットンは育つことを知っていたため、自然環境を壊さない栽培を実現できたのです。保水性に優れ、人に優しい特性を持つオーガニックコットンは、まさに最適な素材だと考えています。

ーー素材選びで特に大切にしていることは何ですか?

青海:素材選びで何より大切にしているのは、信頼できる生産者の存在です。その代表がサリ一さんで、サリーさんが生産するコットンを信頼しています。また、白いコットンはタンザニア産など品質の良いものを選び、色合いや強さをパートナーに任せて見極めています。素材の一点一点に妥協せず、最適なものだけを使うことが私たちのこだわりです。

綿糸で縫う、唯一無二の技術

ーー長年培ってきた縫製技術で特に大切にしている工程や心構えを教えてください。

青海:私たちの大きな強みは「綿糸で縫える技術」です。これは簡単なことではなく、他にはない差別化ポイントだと思います。伸びる生地を扱うのは難しいのですが、素材を大切にしたいからこそ、無駄にせず丁寧に扱います。
通常、アパレル業界では生産段階での不良品率が3割とも言われますが、私たちの工房では不良品率はわずか0.1%程度。品質に妥協しない姿勢の表れです。裁断後にはどうしても端切れが残りますが、それも「にぎにぎ」など子どものおもちゃとして再利用する方法を常に考えています。
ミシンも特注品を使い、糸や製品ごとに最適なものを選んでいます。細部まで工夫することが、素材を活かすために欠かせない姿勢です。

締め付けない、心地よさを纏う

ーーデザインやサイズ、肌触りなど、着心地を追求する中で意識していることは何ですか?

青海:一番は「締め付けないこと」です。肌着は生地の伸縮性を活かし、脇に縫い目を作らず、身体に自然に沿うように仕立てています。縫い目の不快感を解消するための工夫で す。
ウエストのゴムには天然ゴムを、染色には天然素材を用い、副資材までオーガニックで統一しています。肌触りや機能性だけでなく、素材のすべてをオーガニックで整えることで初めて「本当に心地よい一着」になると考えています。

快適さが暮らしを変える

ーー実際に着る方から届いた印象的な声や、暮らしに寄り添うエピソードがあれば教えてください。

青海:「快適さ」「心地よさ」といった感覚の変化を語る方が多いです。生理痛が軽くなった、夜ぐっすり眠れるようになった、こうした声は、私たちにとって製品づくりを続ける大きな励みになっています。
また、ふるさと納税を通じて購入された方がリピートしてくださるケースも多く、製品が暮らしの質を支えていることを実感します。

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虫の音と川のせせらぎに包まれる工房

ーー奥大和・御杖村という土地が、ブランドの背景にどんな影響を与えていますか?

青海:ブランド名の「スガノ工房」は、この地域の地名から取りました。2025年には実店舗も構え、祖父が育てた檜で什器をつくり、村で録音した虫の音や川のせせらぎをBGMに流しています。奥大和の自然がそのまま店づくりやブランドの背景に息づいています。
この土地には「静かで時間が止まったような」空気があり、本当に価値を求める人が訪れる場所になると信じています。祖父から父と母、そして私へと引き継がれた工場を使い続けていることも、地域と工房が深くつながっている証です。

ーー「奥大和」という地域で暮らす中で感じていること、外から来た人に知ってほしい魅力があれば教えてください。

青海:一番伝えたいのは自然の豊かさです。夏には店の前を流れる川で蛍が見られます。かつて3000人いた人口は現在1500人に減り、危機感を抱いていますが、それでもこの村に人を呼び込みたいと思っています。
生まれた赤ちゃんにベビー肌着を贈る活動もしています。奈良全体への愛着も強く、地元の人々にも製品を使ってほしいと願っています。

技術と素材を絶やさない使命

ーー今後、挑戦してみたいことや、広げていきたい活動はありますか?

青海:日本での販売を広げるために、海外での評価を強化したいと考えています。サリーさんのつながりからアメリカへの注文も増え、自然を求める中国のバイヤーや海外の顧客とも接点が生まれています。
以前、東京駅前で店舗を構えていた時は、都市部だからこそ健康への切実な悩みや高い意識を持つ方が多いことを実感しました。その後もオンライン購入が増え、リピーターの方も非常に多くなっています。今後は、そのリピーターの方々が知人へ紹介してくださるような広がりをつくっていきたいと考えています。

一人でも多くに届けたい情熱

ーー次の世代に伝えたいことは?

青海:私の使命は、オーガニックという素材と、長年培ってきた縫製技術を守り、次の世代へ継承することです。自社の技術者は少なく、サリーさんにも後継者がいない現状をとても深刻に捉えています。このままでは大切な素材と技術が途絶えてしまうかもしれません。
だからこそ、もっと多くの人に製品を知ってもらい、「この仕事をしたい」と思ってもらえる環境をつくる必要があります。生産を広げ、販路を開拓し、展示会やポップアップで発信を続けています。関西を中心に展示会へも出展し、一人でも多くの方に製品を届けるため努力を重ねています。

Products

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Company Info.

Nameスガノ工房株式会社
Location〒633-1302  奈良県宇陀郡御杖村菅野2696
E-mailsuganokoubou@gmail.com
HPhttps://suganokoubou.com/